アフターダーク

飛行機での移動時間に読んだ本。最近、初期の村上作品ばかり読んでいたので、この本はなんだかとても新鮮だった。ストーリーの設定もあると思うが、メルヘンっぽさが薄まって、よりクールになった印象を受けた。


「私たち」と称された謎の「眼」から覗いた世界が客観的に淡々と描かれている作品。特に心の闇をテレビモニターに映った別の世界の出来事として捉えた具体的な描写は詳細で、主観的に描かれるよりもリアルな苦しさが伝わってきた。微妙な唇の動きをはじめとする表情の描写、自分の体を触って存在を確かめる姿、輪郭が滲むとか小刻みに震えるとかの表現、、、見事だった。人と人との繋がり方も微妙で面白かった。


ノーベル賞を逃しはしたものの、これからの作品にも注目したい。

アフターダーク (講談社文庫)

アフターダーク (講談社文庫)