ぼくを葬(おく)る

chelseagirl6132006-05-14


『スイミングプール』で衝撃を受けて以来、好きになったフランソワ・オゾン監督の新作。


余命3か月と宣告された31歳のフォトグラファーが、死に直面したことにより自分自身を見つめ直す姿をつづったヒューマンドラマ。『まぼろし』に続き“死”を題材に取り上げたオゾン監督の分身とも言うべき主人公を、『夏物語』の実力派俳優メルヴィル・プポーが演じる。

映画終了後、「死」がメインテーマの映画なのに、悲しいというよりは清々しい、前向きな感情の方が不思議と勝っていた。それは主人公ロマンが「死」と直面したことによって「生きる」ということを理解し、今まで以上に力強く生きることができたからだろうか?とにかく、変にお涙頂戴的なストーリーになっておらず、ただ「最後に自分がすべきことをする」映像に強い生命力を感じた。


お勧めは、ロマンが祖母にだけ心を開くシーンと、電車の中で乳飲み子を見つめるロマンの表情と、ラストのSunset。いっぱいありすぎて困る位、見所満載。エンドロールのBGMが波の音なのも良かった。目をつぶって映画の余韻を楽しむことができた。


しかし、このオゾン監督というのは人間の覚醒を描くのがホント上手。何かのきっかけによって、人が輝きだす様を繊細に美しく撮れる監督だと思う。それでいて、必ずリアルな人間臭さを残しているので、偽善的でなく自然なこととして受け入れられる映像になっている。しばらくこの監督からは目が離せない。