黄門伝説

chelseagirl6132006-03-03


JAL機内誌SKY WARDの「つばさよつばさ(文:浅田次郎)」の今月号がかなりおもしろかった。機内で爆笑を堪え、にやける顔を雑誌で隠すのが大変だった。

勘の良い方はタイトルを見ただけで、察知するかもしれない。話は「多摩肛門科」の看板を車内から発見したことに始まる。で、彼は想像する訳よ。「多摩肛門科」があるんなら、「水戸黄門科」もあるだろうって。こういう発想、好き。

おかしい。ものすごくおかしい。ここまでおかしい連想をすると、どうしてもてめえひとりで笑っているわけにはいかず、家に帰ると直ちに104に電話した。
水戸肛門科が本当に存在したなら、その事実を知ったとたんに笑い死ぬのではないかと危惧した。書斎から104に通話をしたままの姿で変死したら、世の人々はさぞ首をかしげるだろうと思った。
「あの、ちょっとお尋ねします。茨城県水戸市の、水戸肛門科という病院をお願いします」係員は多分うら若き女性である。玉を転がすような美声で、「水戸肛門科ですね。少々お待ち下さい。」とこともなげに言った。鈍感なのか、それとも職業意識に燃えているのか、女性は笑わなかった。・・・

ねっ、くだらないでしょう。あることを期待しながら、でも、あったときの面白さに耐えられないだろうと危惧しながら、電話をしてる浅田さんを想像すると尚おかしい。こんなくだけた導入から、後半では「黄門」という呼び方が、唐代の門下省次官の「黄門侍郎」のような権力を持つところからきてるのでは、という話に展開していく。そして、最後は明治維新時の水戸藩の話でしっかりと締め括っている。サスガ。浅田氏の「読者を惹きつける、飾り気がなく、潔い書きっぷり」にただただ感心した。