風の歌を聴け

好きだな、この空気感。これが率直な感想。表題の言葉を借りれば、作品中に流れている風が私にとって非常に心地良かった。といったところ。
物事を達観している僕、その僕と不思議な女性達との関係が、近からず遠からずでいい感じ。村上作品ではお馴染みの設定は初期の作品から根付いていたのね。あと時空を超越する井戸の存在。これも好き。

短いセンテンスの中にシーンを思い描くのに充分なだけの細かい描写が含まれており、すんなり彼特有の世界に入っていけた。ちょっと汗ばむような夏の日の光景が目に浮かぶ。すごくビールが飲みたくなった。

また「羊をめぐる冒険」を先に読んでしまった私としては、鼠のキャラクターにも関心があった。僕と鼠が山の手にあるホテルのプールに行くところはお気に入りの場面だが、後に羊に乗っ取られることになる「鼠の弱さ」が、ちょっと分かった気がした。


風の歌を聴け

風の歌を聴け