東京奇譚集


村上春樹の短編小説集を読んだ。今回は短編だったせいか、そんなに強く心に残るものはなかったが、彼の小説はどれも好きだ。センスの良い描写や淡々と流れる時間がとても私にはとても心地よいのだ。


中でも「日々移動する腎臓の形をした石」が気に入った。「腎臓の形をした石」って、字面にするとグロテスクだけど、そらまめみたいな形してる石ってことでしょ?想像すると、つるっとしてて愛らしい物体が頭に浮かぶ。この「キモかわいい」感にまず心をつかまれた。まぁ、本編には全く関係ない感想ですが・・・。


で、この石は主人公淳平の書く小説の中に出てくるのだが、どうも「石」というのが前の彼女に対する未練というか前に進めない自分についている錘のようなものの象徴として描かれているような気がした。そして、今付き合っている彼女キリエを象徴するキーワードが「風」。「石」と「風」という相反するものと主人公との距離感や絡み方が面白かった。

東京奇譚集

東京奇譚集