組長逝く

と、いっても本当にその筋の方ではない。近所の酒屋のおやじに我が家で勝手につけたあだ名である。五分刈りに大門サングラスという風貌に加え、酒飲みでドスの効いた声とくれば「組長」しかなかろう。幼い頃から「くみちょー」と呼んで慕っていた。


見た目の恐ろしさとは裏腹に、近所の子供には非常に優しく、いろんなことを経験させてくれた。一緒に行ったホテルのバーで初めてピンク色のカクテルを飲んだ時は大人になった気がしてドキドキしたし、フレンチのエスカルゴを食べた時は衝撃を受けた。あまりのソースの旨さに添えてあるパンをお替りしたのは鮮明に覚えている。
また、ジャズやパーカッションを中心とした民族音楽の演奏もクラブに連れて行って聞かせてくれた。あと、お正月に初詣でお会いすると必ず「金杯」の予想を聞かされたっけ(全て小学生時分の経験…)。


こう思い出してみると、組長に遊んでもらったことは今の私の嗜好に大きく影響しているなと思う。お酒が好き、ライブが好き、競馬が好き…数知れない。スゴいな私、組長チルドレンだ…。
きっと一般常識的に考えたら「教育上あまりよろしくないこと」なんだろうけど、一流のモノを小さいうちから経験させることは大事だとか、大人になっても遊びの心を忘れないカッコよさとか、今になって大事なことを沢山教えてもらったと思う。ありがとうございました。


ちなみに亡くなる前日までお酒を召し上がっていたとのこと。サスガっ組長。本当に粋なおやじだった。