秋の森の奇跡

主人公は42歳の主婦。彼女が母の介護問題や、夫の不倫疑惑から逃れるように不倫をしてしまうという話。最近読んだ林真理子さんの本の中では、年齢設定がかなり高い方だ。年齢を重ねているだけに、こんなことで動揺してはいけない、ここからは踏み込んではいけないと、世間体や常識を鑑みて規制し、必要以上に冷静にブレーキをかけようとする姿が印象的だった。「たかがキスではないか」と必死に落ち着こうとしている所とか、微妙に可愛かった。結果として、彼女は永遠に愛を誓う不倫相手を見つけてしまうのだが、高い塀を設けているほど、崩されやすいってことを思い知った。


あと、痴呆の母に頭を悩ましたり、夫の不倫がネットの書き込みによってバレたりと、まさに今の日本を象徴するような設定が多くてリアルだった。こういう設定が「すぐ近くにありそうな感」を醸し出し、ぐいぐい話に引き込んでいく。


しかし、私が唯一解せないのは、ことごとく見た目がイマイチの男に惹かれていくというところ。真理子先生お得意の服の質感、後ろ姿、女性を待つ仕草等による男性の絶妙な描写から想像するその男性像に私は全く魅力を感じない。不倫相手とはそういうものなのか?誰かに求められればそれでいいのか?なんでだろう?なんでだろう?


秋の森の奇跡

秋の森の奇跡