その目で、心で衝撃と対峙せよ

chelseagirl6132006-05-03


キネカ大森で三島由紀夫映画祭なるものを開催しており、「憂国」と「黒蜥蜴」を見てきた。


憂国【1967年】

武山信二中尉は2.26事件の決起に加わることが出来なかった。中尉がその悔しさと、旧友を討てと命じられた苦悩を胸に自決するまでを描いた作品。

上映中、台詞は一切なく、ワグナーの音楽のみが流れていた。台詞がない分、目のカットが多いのが印象的だった。あと、自決のシーンは正直、目を覆った。あんなリアルなもの、よく当時流せたなと思う。アワ吹いたり、内臓出たりしちゃってた・・・。しかし私が1番気に入ったのは妻麗子の姿。とても美しく描かれていて、彼女の行動1つ1つに中尉への愛を感じた。まず、前述した中尉の壮絶な自決を涙を流しながらも、目を見開いて見届ける。そして、涙でぐしゃぐしゃになった顔を綺麗にお化粧直しし、中尉に軍の帽子をかぶせる。最後は小刀で喉を突き、中尉に覆いかぶさる様に倒れる。この一連の動作はまさに日本の美ってやつだろう。全てが衝撃的であっという間の28分だった。


「黒蜥蜴」【1962年/大映

三輪明宏出演のやつだと思って、すごく楽しみにしていたら京マチ子の方だった・・・。かなりショックだったが、普通に楽しめた。恋心を秘めた黒蜥蜴と明智小五郎の間に流れる追っているのか追われているのかといった空気がいい。やっぱり三島由紀夫が戯曲化した作品の中ではこれが1番面白いのでは。


この映画祭、寂れたスーパーの食堂街にある映画館でやってるのだが、たくさん人が入っていて驚いた。やっぱり三島ファンって多いのね。「潮騒」を見逃したのは痛いが、来週市川雷蔵主演の「炎上」をやるらしいので今から楽しみだ。